涙を拭う。 そしてもう一度、強い眼差しを巧に向ける。 あたしの眼差しに面食らったのか、巧が焦ったように口を開いた。 「医学は日々、進歩してる。いつか伶良に合う、治療法が発見されれば、君の心臓は、正常に動くだろうね」 少し早口なその喋りは、あたしの不安を現実のものにさせた。 「巧……?」 いつもの、穏やかな顔とは全く違う、眉間に皺を寄せた巧の名を呼ぶ。