風呂から上がった俺は、コップに麦茶を注ぐ。
一気に流し込んで喉を潤わせると、少し冷静になれるような気がした。
ふと、ちらりと、教科書が散らばる机を見る。
教科書の陰になっているコルクボード。
そこにあるのは間違いなく、俺の幸せだった日々。
もう、戻れないことはわかっている俺の、過去。
そんなことを考えて、相変わらず、女々しいやつだ、と自分を叱咤する。
そして、視線をソファーに移すと、出会ったばかりの美少女と目が合った。
「ベッド、使っていいから」
それだけ言って、ダイニングの電気を消した。
すると彼女は、とても不思議そうな顔をした。
「寝ないの?」
「俺は、ソファーで寝るよ」
「そうじゃなくて、あたしを抱かないの?ってこと」
彼女は一切の感情を持たない顔で、俺にそう言った。