「大丈夫だよ、巧。4歳のころ、はじめて病気がわかった時からあたしはこういう運命だったんだよ」


心配そうにあたしを見つめるお姉ちゃんを横目にできるだけ平然を装って言う。



「俺はね、伶良と出会ってなければ、きっと医者になることはなかったよ」

巧は一点を見つめたまま、少しだけ、顔を持ち上げた。



「南波先生が、泣いちゃうね」

あたしが言う南波先生とは巧と和泉のお父さんで、あたしの元、主治医。

南波先生は、兄弟二人にはどうしても医者になってほしい、とあたしにまでよく言ってたものだった。



「父さんの言う通り、俺は医者になった。なぜだかわかる?父さんの言い付けを守ったんじゃない」


よく見ると、巧の目にはうっすらと、涙が浮かんでいた。

なんだかあたしまで、涙が出てきそうになるのを必死でこらえた。



「……じゃあ、どうして?」


声が震えた自分を叱咤して、巧に目をやる。