「ねぇ、巧?和泉どこ行ったの?」
「巧先生、でしょ?相変わらずだね、伶良は」
消毒液の独特の匂いがする病室。
ベッドの上に座って、白いシーツに包まれた布団を整える。
「診察の時間だ、おいで」
目の前の主治医の先生を、あたしは巧(タクミ)と呼び捨てで呼んでいる。
彼が医学部のエリート学生だった頃から知っているから、今さら、先生、なんて呼ぶのはなんだか恥ずかしいのだ。
あたしは気がつけば、人生の半分以上をこの病院で過ごしてた。
第二の家、みたいなものだ。
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