「なに…考えてんだろ…アイツ…」

責めたい。

だけど、責めたところで何もこの現実は変わらない。


あっちには、あっちなりの事情があったんだ。

そう思うしか、俺を、俺自身を保つことが出来なかった。



苦しい。


片想いして、ただ陰から見てた時より、苦しい。






毎日、してたメール。

毎日、見てたアイツの名前。

毎日、見つめてたアイツの顔。



全て音を立てて崩れ去る。

怖いくらい、早いスピードで崩れ去る。


「俺はこんなに好きなのに…!
アイツにとって、俺は
それだけの存在だったのかよ…」


考えれば、考えるほど、胸は締め付けられ、涙は止まらない。






冬休みの終わり。


俺は、大切な物を失った。


明日から学校だ…。

会いたくねぇよ。


今までは、嬉しかった、アイツの斜め後ろの後ろ席。


遠いようで、意外に見えるんだ、アイツの姿。


アイツの後ろには、さっきメールしてきたアイツの親友がいるから、アイツはよく後ろを向いてる。


時々合う目が嬉しくて。


でも、明日からは感じられない。

離れなければならない。






高添 未紀...Side


「………。」


たった今、親友の里麻に、メールをしてもらった。


別れたいって、うちの彼氏に言うように。


悲しむのかな…?



うちは、頭の中がグチャグチャだった。


本気で、うちはアイツを好きだと言えるだろうか。


元々、アイツが告白してきたとき、うちは違う人が好きだった。

アイツの親友を……。


でも、アイツが告白してきて、たくさんアタックされた。


毎日好きって言ってきた。
毎日可愛いって言ってきた。
毎日欠かさず、メールを送ってきた、アイツ。






「キモ…」

最初はそう思ってた。

だって、今時好き好きって言いまくって可愛いって口説いてって…

こんな中二男子居ますか!


でも、何時しかそれが
当たり前で、楽しくなっていた。


何時しかアイツに染められてたんだ。






自然教室でも、友達に相談して、やっぱりうちはアイツを好きなんだって感じた。


だから、返事した。

うちも、好きって。


でも、冬休みに会ってしまった。



アイツの親友に。



うちは、心が締め付けられた。


「ホントニウチハアイツヲスキトイエルノ…?」


そんな考えが、アイツの親友に会ってから頭をグルグルとしていた。


で、迷ったうちがした行動。


アイツとのメール履歴を消し、アイツのアドレスを消し、自分のアドレスを変えた。


わからなくなって、冷静に物事を判断できなくなってた。






結局は、アイツを傷付けてしまうだけ。


それに気付くのは後だが……。



「明日は学校かぁ…」

冬休み明け初登校日。


「憂鬱」


その二文字が頭を過ぎった。







Ⅱ.未練、後悔



品濃は高添に未練を残し、


高添は品濃に後悔を残し、



時は過ぎて行く。







品濃 和人...Side


学校が始まった。


「品濃、おはよ!」

「お、広也」


松宮広也は俺の親友。
同じ卓球部だし、今は同じクラス。

背が小さくて、可愛い。




(可愛い……。)

広也を見ると、いつも男なのに可愛いなって思う。

でも、最近は可愛いって言葉はアイツにしか言ってなかった。


胸がズキッと痛む。


「なに、暗いじゃん」

そんなことを考えていた俺を見据えたかのように広也は俺の顔を覗き込む。

「……フラれた」


ポソッと呟いた俺を見て、広也はポンと俺の肩を叩いた。


「そっか……まぁ、でも次があるだろ!?品濃だったら次もっと良い彼女出来るって!」


広也はそう言って、教室へ行った。