「広也は本当に死にたくなかったんだな
お前を残してなんて」
「…広也はやっぱ一人で抱えたまま逝っちゃったし」
しばらく沈黙が流れる。
「だから、広也みたいに医者を恨んでる人も、
助けてやりたいんだ
医者は、どんな奴だって最後まで諦めないで患者を治療してるって、わかってほしい」
俺が、そう言った瞬間、部屋の中なのに風が起こった。
「……広也…」
高添がふと呟く。
「広也がまだここに居る…朝も風に乗って広也の匂いがした」
「俺もだ」
「広也……行かなきゃ
ダメだよ?ここに居てはいけないの…」
高添は涙を堪えながら言う。