「はい!誕生日おめでと☆」
「もう……あんまり誕生日喜べないんだけど?」
私、清佳は明日、二月五日に
…………三十歳になります。
「はぁ……結婚もしないまま、三十路を迎えるなんて。」
世間一般として『負け組』に入るんでしょう?
何故、こうなるのかしら?
「……ま、まぁまぁ!清佳には伶君がいるじゃない!」
とフォローに入るのは、私の親友、遊湖。
「遊湖……私って、魅力ない?」
先程遊湖からもらったプレゼントの袋をギュッと握り締めて、遊湖に詰め寄る。
「……は、はぁ?」
「何で伶は『結婚しよう』って言ってくれないのかなぁ?」
そう、私には彼氏がちゃんといるのだ。
高校の頃から付き合っている、伶。
『伶……私と付き合って?』
伶とは高校で出会って、伶の可愛らしい笑顔や優しい所を好きになった。
『いいよ!』
私の告白にその可愛らしい笑顔で頷いてくれた伶をみた時、大量の涙が溢れた。
これが、嬉し涙でよかった。
そう何度も、神様に感謝した。
あれから、十四年。
「十四年も付き合ってるのに、結婚しようって一度も言われたことないんだよ?私に魅力ないから?……伶、私とは結婚したくないのかなぁ?」
「いやぁ、まさかそりゃないでしょ?これで結婚しなかったら青春時代返せよって感じじゃん。」
そうなんだけどね?
ほんと、伶はどう考えてるんだろ?
でも……怖くて、聞けない。
『結婚』を伶に強制したくないし、もし伶が私とは結婚したくないと思っていたら?
私、伶と別れなくちゃいけなくなるの?
そんなの、やだ。
私は、何年付き合っても伶への気持ちが冷めることはないし、伶のことが大好き。
だから、いまだに何も言えないでいるんだ……。
「でもさ、ほんと何で踏み切らないんだろう、伶君。明日、もし伶君がなんも言ってこないようだったら、これからのこと考え直した方がよくない?」
「考え直す?」
「……他の人探す、とか。」
「そんな!!」
「いや、まぁいくらなんでもそんなことにはならないでしょ。でも、脅す位してもいいんじゃない?結婚したいんでしょ?」
「………。」
結局、なにも言い返せなかった。
「ハァ。」
誕生日の前日なのに、こんなため息、どうかしてる。
でも、もう今日が二十代最後の日かぁ。
そう考えると、何だか切ない。
プルルッ!
ぼんやり歩いていると、電話がかかってきた。
ディスプレイをのんびり覗いてみると、目に飛び込んできた、゛伶゛の文字。
―伶!?
ピッ!
「もしもし、伶!?」
『あ、清佳?今日、ごめんね?本当は一緒に誕生日迎えたかったのに、出張入るなんて!明日の夜には、絶対戻るから!!』