「一人で…全員…?

おい朔夜、殺られるぞ…!!」

思わぬ事態に冷や汗をかきつつ叫ぶも

朔夜に

『これ以上近付いたら殺す』

とでも言うような眼を向けられ、

そこに立ち尽くすことになった。

暗い色のマントを羽織り

そのフードを被った男は

妙に美しい顔をしている。

たまに、フードから真黒な前髪や

横の髪が覗く位で、

その他は、今使っている武器が

自分のものより少し短い位の刀

事しか確認できなかった。

「母国の回し者か何かだな…

何の用だ!!」

朔夜はそう言いながら今まで使っていた

クナイと短剣を仕舞いつつ槍を取り出した。

その動きの速さに驚いたのか、

槍に危険を感じたのか。

大きく距離を取って、その黒猫は

肩をすぼめて見せた。

「全く、君一人を殺せば良いと思って

僕だけで来たのに思ったより強いね。

また出直すとするよ、朔夜ちゃん。」

胡散臭い表情に合わず、

異常な程の爽やかな声をあげると

可愛らしくハートが飛ぶのではないか

と思われる位完璧なウインクを

雫に向けてし、大きく手を振ると

パッと消えていった。

「…何だ。アレはホモなのか?」

朔夜も呟きながら武器を仕舞って

青年が去って行った方を見たまま

小さく首を傾げる。

「…ふむ。 アレか、変態か。

いまいちよく分からないが、

消す他無いだろう。」


その口元は

美しい弧を描き

吊り上がっていた。