「加奈子・・・」

 不意に、初めて・・野澤に名前で呼ばれた

 「な、何?」

 「次は梅干しがいい。みそ汁は今日と同じ赤だしでいいや。」

 「禁止なんでしょ。ダメよ」

 「売店には、ぱんとかインスタント麺とかコンビニおにぎりみたいのしかないんだぜ。」

 「子供みたいなこといわないでよ」

 コンコン・・・(ドアをノックする音)

 「はい、どうぞ。」

 「こんばんは。」

 「あ、高津先生。どうも。あ、お見舞いの方いらしてるんですね。」

 加奈子は軽く会釈したが、背の高いすらっとした美人の登場に

さらに緊張した・・・

 「あ、こちらは、高津先生。副担任なんだ。こいつは、中学の時の同級生で、佐伯です」

 なんだか加奈子と話している時と緊張感が違う。野澤はあきらかに

 気を遣って話している・・・・なんだか胸がぎゅっと痛む プチジェラシー

 「かわいらしい方。野澤先生の彼女?」

 「とーんでもない。ただの友達」

 すぐに野澤が否定する

 ・・・そうなんだけど、そうハッキリ言われるとなんだか

 凹む・・・

 「加奈子、高津先生に、何か飲み物買ってきてよ」
 
 「あ、そ、そうね。ごめんなさい。気が利かなくて。何がいいですか?」

 「お気を遣わずに・・・」

 「お茶でいいですか?」

 「あ、はい。」 

 加奈子は販売機でお茶を買って戻ってきた。

 「どうぞ・・・」

 加奈子はお茶を高津に手渡した。

 かわいらしい花束を野澤が持っていた。

 「加奈子、花、飾ってよ。せっかくいただいたんだから。」

 「花瓶、どうしよう。」
 
 「それに飾ったらいいんじゃないの?」

 さっき飾ったばかりの加奈子の持ってきた花瓶を野澤が指さした。

 「そ、ね・・・入るかな・・・」

 洗面所で加奈子の活けた花と高津の花束の花を活け変えた。