俺は何とか、全教科、無事に終えた。
周りはテストから解放感に満たしている。
だが、稜人だけは違っていた。
テストが終わっても、自分の席から立とうとしない。
「稜人…?」
「…俺、はんぱなく緊張して、名前書いたか、覚えてねえ。」
いくら出来が良くても、名前がなきゃ追考査だ。
「大丈夫だって、勉強する時に、まず名前書くって身に付けただろ?」
「…あ、あぁ。」

そして、テスト返し。
俺のところ位は珍しく、担任が全教科のテストと解答を付けて返し、
後に各担当に詳しく解答する。
出席番号順に名前が呼ばれていく。
「知花 郁弥。」
担任から呼ばれ、取りに向かう。
「良くやったな。全教科90越えだ。」
90越えは久々の高得点だ。もし、採点ミスが無ければ、確実に10位以内だ。

そして、稜人が呼ばれた。
「野崎 稜人。」
「はい。」
稜人も暗い顔をしている。
どうか、高得点でありますように。

「稜人、頑張ったな。全教科80越えだ。進級できるな。」
「ありがとうございます!!」
稜人はどうやら、留年危機は免れたらしい。
「郁弥!俺、80越えだ!」
「おう。」
すると、稜人は涙目で言った。
「マジで助かった…、サンキュ。」
こいつと一緒に進級できるんだと思うと俺の肩の荷が下りた。