ただ、メールをしていくごとに、
蔵重は悪い子ではないのは気づいてきた。

何故だかわからないけど、
どうも蔵重が出会い目的とか企んでるはずないと思っていた。

そして、今日。
あれから、メールを重ねて電話までするようになった。

最初はお互い、恥ずかしがって、沈黙ばかりだった。
俺は訛らないように、傷つけたりしないようにといろいろと
気をつけて話していた。
今日も電話だった。
蔵重はどうやら天体が好きで、よく天体の写真を見たり、本を読むのが好きらしい。
「知花くん、外見れるかな?」
「え?」
「今日、月が満月なんだよ?」
俺は、自分の部屋の窓を開けて月を見た。
彼女の言うとおり、満月だった。
「ねえ、知花くんは、月の影の模様は、何に見える?」
「え…おれは、ライオンかな。」
「そっかぁ。知花くんはライオンに見えるんだね。」
その受話器から聞こえる声から、蔵重が少し微笑んでるように思えた。
「じゃ、蔵重は?」
「私は…うさぎ、かな。」
「うさぎか。なんか、かわいいな。」
「え?…でもね、月も神話があるんだよ?」
俺はそれに答えようとすると受話器越しから、「水柚、もう寝なさい!」と
母親らしき人の声が入った。
「あ、もう切ろうか。親御さんにも迷惑掛からないように。」
「ごめんね…、今度調べてみてね。」
「おう、じゃあおやすみ。」
「おやすみ。」