「そ、そうか?」


迫力負けしたのか、少し身を引いて、宮本さんはそう言った。


「そうですよ。美しい和、なんて。宮本さん人当りいいし、まさに『名は体を表す』ですね」


誤魔化せた! やった!! と思ってほっとして、ついつい饒舌になる。


でも、そう感じたのは、本当だった。

綺麗な名前だと、思う。


・・女みたいだけど。



「・・俺、人当りいいか??」


そんな質問が降ってきて、思わず首を傾げる。

「いいじゃないですか」


確かに俺様だし、ゴーイングマイウェイだし、機嫌悪いと八つ当たりするし、怒ったときなんて体の芯から凍ってしまいそうな目をするけど。


・・こう上げ連ねると凄いな、とも思うけれど。


「・・なんだかんだ、みんな宮本さんのこと慕ってるし」


それだけやりたい放題なのに、社内にほとんど敵がいない。
それは、元来の人当りの良さゆえだと、思う。



「俺を敵に回したら何にもしないからな」


嘲るように、唇の端だけ持ち上げて、笑う。

意地悪なその笑顔を、なんだか微笑ましく思うあたしは、きっともう、この男の毒牙にかかっている。



「それはそうかもしれないですけど、あたし、誰の口からも宮本さんの悪口聞いたことないですもん」


基本聞き役のあたしには、社内中の陰口が入ってくる、と思う。


使えない部下。
意地悪な上司。
嫌な顧客。


話を聞いていると、誰もが言われる立場になる。

きっとあたしも、例外ではなく。