そんなことが、何度かあった。


いつしか、あたしの頭を乱暴に撫でるその手が待ち遠しくて、気付けばその姿を目で探す自分がいた。



ある日、彼の名を書面で見つけた。

「宮本美和」


あたしの会社に「宮本」はひとり。

絶対に、彼。



「・・みわ?」


女みたい。
そう思って、つい声に出していた。


「・・・違う」


ふいに降ってきたのは、怒りを孕んだ声。

驚いて、肩が上がる。


その衝撃で振り返ると、宮本さんが立っていた。