「高階」


あたしの名を呼ぶ声に、振り返る。


「これ、やっといて」


そういって、書類を置いていく。

ようやく、あたしも一通りのことを覚えた。


いちいち説明されないでも何をすればいいかわかる、というのが少しだけ誇らしい。



当たり前といえば当たり前のことなのだけど。



「わかりました」


にっこり笑うと、ふいにその大きな手があたしの頭を撫でた。


「み、宮本さん?」


抗いはしなかったものの、驚いて声を上げる。


「…よろしくな」


ただ、それだけ言って宮本さんは離れていく。



頭のてっぺんに残った熱が、少しずつ消えていくのを、ただ寂しく感じた。