そんな俺を見て、高階はふわりと柔らかく笑う。
肩より少し短い、細そうな髪が揺れる。
「それはそうかもしれないですけど、あたし、誰の口からも宮本さんの悪口聞いたことないですもん」
ゆっくりと、一音一音を大事にするように言葉を落とす。
しっかりと俺の目を見つめたまま。
「宮本さんは、みんなに好かれてますよ」
だから、安心して。
そう言ったように聞こえた。
高階の薄い茶の瞳が俺を捕らえて離さない。
本当は不安だった。
俺は俺でしかなくて、変えようもないし、変える気もさらさらないけど、心の奥の奥に、ずっと不安があった。
排除されたくなかった。
認められたかった。
高階の瞳には、嘘が見えない。
きっと俺が目を合わせて話すのは、目は嘘をつかないから。
どんなに口で嘘をついたって、目を見れば解る。
一瞬の揺らぎが、
一瞬の軽蔑が、
すべて表れる。
信じられると思う。
こいつの言葉は、俺にとって真実だと。
『みんなに好かれてる』
高階の言葉を頭の中で反芻したら、途端に照れ臭くなった。
みんながこいつに何を話してるかなんて知らないけど。
少しの嬉しさと、照れ臭さが同居する、くすぐったいような気分になった。
なんだか切ないくらいに。