あまりに驚いて、声が出ない。
「・・あ、ああ・・・」
漸く振り絞るように出した声は、酷く掠れていた。
その声を聞いて、高階が満面の笑みを作る。
にこにこと、嬉しそうな。
その顔を見て、負けたような気分になった。
口惜しいと、思う。
きっと、自分の器の小ささと、それすら受け入れたお前に。
「よく読めたな」
口惜しいけど、本当の理由は見せない。
お前にも、俺自身にも。
「あたし、漢字は得意なんです」
高階はそう言って深く笑う。
得意満面、ってこういうことかな。
その笑顔見てたら、嬉しくなってきた。
「・・自力で当てたやつ、お前が初めて」
親以外なら、ずっと間違えられてきた。
日常に、なっていた。
覆してくれたのは、高階、お前だけ。
単純なことだけど、嬉しい。
俺の名を正しく読んでくれたこと。
嬉しかったんだ。