高階は、慌てて書面に視線を戻した。


「みやもと・・み・・」


ああ、とっかかりがまず違う。

流石にヒントくらいは、と思って声を落とした。

「み、じゃない」


その声に顔を上げた高階と目が合った。


もう一度、繰り返す。

「み、じゃない」


「美」に「み」以外の読み方があるのを知らないかもな、と思いながら。



少し、間があく。

やっぱり無理か、と思って俺から折れようとした。
流石に大人げなさすぎたなと思いながら。


なのに、口を開いた俺が、声を上げる前に、高階が言葉を落とした。


「・・よ、し」


零れるように落ちた音に目を見張る。

高階が振り返って、続けた。


「よし、かず?」


俺の名を。


正しく、呼んだ。