「……っくは…」



その場に吐く。



胃液に血が混じっていた。



口を抑えた手が震えている。


これだけ騒いでも二人は一点を見据えたまま。



違う。二人じゃない。もうこれは人の顔じゃない。






嘘だよね?


そうだ。


絶対嘘だ。



私を驚かせようとしているんだ。遅く帰ってきたから懲らしめようと思っているんだ。


冗談だよね?




「おかあさん」



身体を揺する。けどお母さんの身体は鉛のように固かった。



ドクンドクン――



心臓が大きな音をたてる。