「ねぇ〜里衣?」
沙希は教室の窓の外を眺めながら話す。
「何?」
「あたしさっきあんな事言っちゃってたけどさ、やっぱり里衣の好きな人は直哉先輩でしょ?」
「……ん。」
「ちゃんと話し合わないと分かんないこともあるんじゃないかな…?」
「…うん。」
分かってるよ…。
ちゃんと聞いたら、浮気なんかじゃないかもしれない。
でも…やっぱさ…
悪いのは明らか直哉の方でしょ……?
「……でもさぁ、沙希………っておい、聞いてる?」
沙希の方を見ると、沙希はあたしの話を聞く様子もなく窓に身を乗り出し、一点をジッと見つめている。
「おーい…沙希?」
「里衣っ!ちょっ…来て来て!」
沙希は少し興奮した様子で手招きする。
「何ー…?」
あたしも窓の方へ近づく。
「何何?なんもなくない?」
「ほらっあそこ!校門のとこ!」
沙希が指さす方向を見る。
そこには、だるそうに校門に寄っかかる男の姿。
「………あ。」
直哉だ………。
「ほらっ!里衣の事待ってるよ!」
沙希があたしの背中をポンッと叩いた。
「直哉先輩だって、里衣の事、好きだって言ってるんだし、もし本当に浮気なら…それはそれで話し合わなきゃだし、とりあえず会って話さないと………ね?」
「……ぅん。」
「昨日みたいにすぐ怒って帰んなよーっ」
沙希はそう言って、あたしの背中を押した。
あたしは沙希に手を振ると校門に向かって走った。
.