『…低能が』

望人は老人を睨みつけてみるものの一向に気付く気配はなく、仕方が無いので女子生徒の方に人差し指をトントンと置いて換わろうか、と声をかけた。

すみません、と小さな声で会釈した女子生徒は、人ごみの満員電車の中を何とか、望人とその立ち位置を交換する。

お互いの立つ位置を入れ替えて、女子生徒はもう一度望人にすいません、と頭を下げた。

望人は優しく笑顔を作って安心させると次の瞬間、背後に振り向いてさっきまで女子生徒を触っていた老人を睨み付けてやる。