はぁ……。

一つ溜め息をついて電車が止まり、そこが瀬織の目的地。座席から立ち上がり、ドアをくぐり、黄色い線の外側に立ってその場でくるりと振り返る。

逃げていく獲物を残念そうに見つめる中年男に向かって一言。


「死んでしまえ」


聞こえたのか聞こえなかったのか、男は怪訝な表情を浮かべ、しかしそれとは裏腹に口元だけがまだ薄ら笑いを引きずっていて気味の悪さが余計に引き立っていた。