瀬織はできるだけ視界に入れないようにして、中年男とは反対の方向を向く事にする。

「ゥウエホッッ!ゥウエホッッ!」

今度は咳込み出した。

ガラガラの車両の中で、女子高生に密着してコイツは何がしたいんだろうと思いながら、瀬織は不快な一時を過ごす。

「ゥウエホッッ!ゥウエホッッ!ウエッ!ウゥウエェッ!ウエッ!」

今度は瀬織の目の前にしてえづき出す。

なんなんだ、コイツは……と、瀬織が中年男を見た瞬間、至近距離で男と目が合う。


男は瀬織が不快な眼差しで睨んでいる事を確認して、ニヤリと嬉しそうに下品な笑みを浮かべた。