目的地に到着するまでに経由するいくつかの駅の内、比較的大きい駅に止まる。

しかし、そこでも客の乗降はまばらで、しかし一人、50代ほどの中年男性が瀬織と同じ車両に乗り込んできた。

一目見て乱れていると判断できる身なり。

見るだけで明らかに数日間着続けているとわかる汚れた服。

『小汚い中年…』

瀬織はそう思う。

そう思うと、その中年は周りをキョロキョロと観察し始め、そしてその視界に制服姿の瀬織を捉える。

一瞬…ほんの一瞬、中年男と目が合い、そして次の瞬間中年男がニヤリと笑った事を確認して、瀬織は後悔した。