それでも毎日、僕の目前には沢山の人が現れ、通り過ぎ、様々な表情や会話を繰り返すのさ。

昨日のあの娘。

ずっと本を読んでいたんだ。

でもね、気が付くと本を、文字を追ってなかったよ。

頁は捲られず、ただ目の前の文字でなく別の何かが見えてるみたいに……そうしたらその眼から涙が零れた。

雫が噛み締めた唇まで届いた時、ようやく指ですっと拭って少しだけ辺りを気にしながら僕をじっと見ていたよ。


ただじっと。