登校初日、私は父とも母とも一言も口を聞かず、朝食も食べずに学校へ行こうとした。

靴を履こうとしている時、母が急いで私の所に来た。

｢優太、お弁当!｣

私は受け取らず行こうとしたが、さすがにお昼の空腹は我慢できないので愛想無くお弁当をカバンに入れ、家を出た。

教室に入り、席に座った。

私の席は一番後ろの左端だった。

いつもなら可愛い子がいないか"チェック"するのだが、今日はそんな気分ではない。

昨日のせいで…

窓の外の景色でも見ようかと左を向いた瞬間、声をかけてきた奴がいた。

｢オッス！優太！
お前と同じクラスかぁ。ま、くされ縁てやつだな！｣

こいつは健二、中学の時から一緒で、野球で同じ汗を流した友達だ。

私とは違い、よく喋り、たまに"うっとうしい"時もあるが、コイツといるとなぜか落ち着く。

｢優太、もちろん野球部だよな！｣

健二の笑顔と昨日の父の顔が混ざって見えた。

私が答えに戸惑っている所に、もう一人声をかけてきた。

｢ゆーぅた！おはよー！｣

こいつは梨香、中学の野球部のマネージャー。

男連中にはかなり人気があったが、なぜか彼氏を作ろうとしないし、休みの日にはよく私を遊びに誘ってきた。

多分私に気があるのだろうが、私には"友達"以上の感情は無かった。

｢優太、野球続けるよね？｣

梨香が言った。

健二も気持ち悪いくらいこっちを見ている。

｢…ああ、やるに決まってるじゃん。｣

私は窓の方を見ながら答えた。

｢ヨッシャー！決まり！じゃ、さっそく昼休みに入部届け出しにいこうぜ！｣

健二、コイツは本当に声がでかい！

梨香も私の右腕を掴みながら、

｢私も優太が野球続けるなら、マネージャー続けるね。｣

私はとっさに言った。

｢でもお前、マネージャーと勉強の両立むずいんじゃねーの？｣

ハッ！と、昨日父に言われた事と同じ事を梨香に言ってしまった！

梨香は"キョトン"とした大きい目で私を見ている。

｢い、いや、お前がマネージャーしてくれると助かるよ。お前よく気が利くし。｣