「お前さ…」

私は少し照れながら口を開いた。

「え?」

野田も私も、涙はほとんど止まりかけていた。

「いや…だから…その…」

野田は不思議そうに私の顔を覗いている。

「その…"坂本君"て言いずらいだろ。
だから
"優太"でいいよ。」

野田は顔を赤くして、下を向いている。

こっちだって恥ずかしいんだぜ…

野田!

「じゃあ、お前、野田何て言うの?」

「……?」

「だから名前!」

「"ユキ"だけど…」

「じ、じゃあ、オレが先に言うから、お前も続けよ。」

私は咳払いを二回ほどした。

内心、"超ドキドキ"だったが、平気な顔をして言った。

「"ユキ"…」

勿論、"目"は見ていない。

10秒程の沈黙の後、野田が更に下を向き、

「"優太…君"…」

その声はとても小さい。
病気のせいではない。

「だから"君"はいいって!もう一回…"ユキ"…」

今度は"目"を見て言った。

野田も顔を上げ、私の
"目"を見て言った。

「"優太"…」

二人はすぐに"目"をそらし、誤魔化すように、
夕日を見た。

夕日は"真っ赤"だった。

何だか、"自分達"を見ているようで、よけいに恥ずかしくなった。