1ヶ月程経ち、部活の練習試合の相手が決まった。

"新南高校"だ。

まぁ、私にとっては、
"どこでも"よかったのだが。

顧問の先生が生徒を集め、レギュラーを発表する。

「えー、先発ピッチャーは坂本優太!」

頼む!健二、静かにしておいてくれ…

「やったじゃん!優太!」
「ゆーぅた!」

梨香まで…

先輩達の"視線"が冷たい。

まぁ、

"こういう嫉妬"

には中学から慣れているが。

特に

"前エース"

の寺崎先輩は必要以上にこっちを睨み付けている。

「〜以上!レギュラーも補欠も全力でやるように。
では解散!」

こういう時は、

"さっさ"

と帰るのが一番…

なのだが、そう簡単には行かなさそうだ…

一人の男が私の方に歩いてきた。

"寺崎先輩"だ。

この人の親は大財閥会社の社長で、学校への寄付もハンパではない。

学校の半分はこの人の親で持っているようなものだ。

だからこの人には誰も逆らわない。

…いや、

"逆らわなかった"

「よう、坂本。
新エースおめでとう。」

その顔は明らかに

"おめでたくない"。

「お前、新南から推薦来てたんだって?
俺も来てたよ。」

だから?

「お前さ、この前近くの公園で"野田"って子とベンチに二人で座ってたよな?
彼女?」

「そんなんじゃないです…」

私はしゃがんで、スパイクの紐をほどき始めた。

「あの女、確か"障害者"だよな。
彼女でも彼女って言えないか。
ハハハッ!」

"フゥー"

っと深いため息と当時に、私はほどきかけたスパイクの紐をもう一度

"結び"

始めた。