「片岡に、チャンスを作ってやりたかった」


「・・・・・・」


「あいつのことは、以前に職員会議でも何度か話題に挙がっていたしな。色々問題視されていたんだ。
だから、少し前にあいつを養護学校に入れないか、という案が出たんだ」


「でも、遥はっ」


「そう。あいつは声を出せない障害を抱えているが、普通にコミュニケーションを取れる」


「はい・・・」


「だが、周りはそうは思わなくてな。
・・・無理もない。今までは表情を表に出さなかったし、進んで人とコミュニケーションを取ろうとはしなかったからな」



「・・・・・・」


確かに、初めて会ったときの遥は、今とは想像できないくらい無愛想だった。


「だから、証明するしかなかった。片岡は、声を出せなくても、普通の奴と同じことができるってな」


「そうだったんですか・・・」


「だが、舞台を整えても、やるのは片岡だ。そんなときにあいつのそばにいたのが、お前たちだった。
お前たちは片岡を煽り、自分たちも積極的に劇に参加した。チャンスだと思ったよ」


「森野を止めたのも、裕二たちを煽ったのもあなたですよね」


「ご明察。お前たちの、片岡を思いやる気持ちを知りたかった。結果は期待通りだったがな」


―――なんてこった。


すべては、この人の思惑通りだったのだ。


「大体話したが、他に質問は?」


「じゃあ、最後にひとつだけ」


俺は指をピン、と立てて、尋ねた。