少しの間を置いて―――


意を決したかのように、遥がサインペンを走らせて、ノートを美雪に見せた。


『片岡 遥です』


かなり弱々しい字だった。


「うん、知ってるけど」


続けて書く。


『私と、ともだちになってください』


・・・やった。


ついに、その一言を書いた。


「・・・・・・」


美雪の面倒見のよさは、俺がよく知ってる。


友達が多く、人望もあることも。


断るはずはない、と思った。


「・・・悪いけど、他を当たってくれる?」


・・・え?


「どうしてっ」


遥より先に、俺が反応していた。


遥を見ながら、美雪が困ったように言った。


「だって、あたしはその子のこと何も知らないもの。それに、いきなりそんなこと言われても困るわ」


「・・・・・・」


確かにそうだ。


「用はそれだけ?」


「・・・ああ」


「じゃあ、あたしもう行くわ」


遥も、俺も、呆然とする。


「あ。そうそう、あたし、中山美雪。覚えておいてね、遥」


去り際にそう残して、行ってしまった。