――バンッ!!
急に立ち上がったあたしに
美咲が驚きをみせる。
「花梨…??どうしたの??」
「…ごめッ…
あたし…帰る」
最後までガマンしようと
決めた涙が溢れる前に
カバンを取って
出口へと走り出す。
とにかく今の感情から
逃げ出したくて
当てもなくただ
がむしゃらに走った。
「おい…!
花梨、待てよ!!」
…後ろから井上の声が
聞こえる。
でも泣き顔だけは
絶対に見せたくなくて。
だから、叫んだ。
「お願いだから…
追いかけないで……ッ!!」
そしてまた
走って、走って、
走りまくった。
でも全速力がそんなに
長く続くわけはなくて
電柱の前に座り込みそうに
なった時
……体が心地よい感触に
包まれた。
…あたしのすぐ後ろで、
少し荒くなった息音がする。
「…逃げんじゃねぇよ。」
……あたしはいつの間にか
井上の腕の中にいた。
「ッ…!!離してよッ…!」
「離せるわけねぇだろ。」
井上が一層強く
抱きしめてくる。
嫌なはずなのに…
彼の腕の中にいると
落ち着いて。
すべてをさらけ出しても
良いような気さえする。