「何を書いているの?」

「んー。スケッチ中」

質問の答えになっていない…

「ここを書いているの?」

「…まぁ、ね」

鈴祢は僕の顔を見てくれない。

「隣、いい?」

「えっ!?あぁ、うん。どうぞ…」

鈴祢は僕が座るために少し横にずれた。

鈴祢はなかなか喋ってくれない。

僕はスケッチブックを覗き込んだ。

「う…わっ!」

鈴祢は驚いて僕から遠退いた。

「勝手に見ちゃダメ!」

鈴祢が少し怒った顔をした。

でもその顔と鈴の優しい音が全然あってなくて笑える。

「絵、描くの好きなんだ?」

鈴祢の警戒心がとけたのかにっこりほほえんだ。

「画家になるのが夢なの!」

僕の心は締め付けられて、目が釘づけになる。

僕も気が付いたらほほえんでいた。

「きっと…叶うよ…」

「えへへー。ありがとお」

鈴祢は照れ臭そうに小さく折り畳んだ体をキュッと縮めた。

「あまり授業とかで見たことないけど何組なの?」

「あっ!私学科が違うから。美術科なの。森山くんは普通科だよね」

「えっ?うん。そうなんだ…」

少し残念だった。

同じ学科なら一緒の授業があると期待してたから