僕は急いで準備して、家から飛びだした。

僕はこんなに急いで学校に行ったことがない。

いつも遅刻ぎりぎりだった僕が余裕がある時間に走って学校に向かってる。

今日は雨が降るかな？

そんな冗談を考えて笑った。

僕がこんなふうに笑えたのは、いつだったんだろう？

きっと小学生くらいだな。

僕だって昔は明るかった。

父さんと母さんが毎日のようにケンカをするまでは…



学校に着いた。

時間は8時ちょっと前。

門は人が一人通れるくらいに開いていた。

僕は門をくぐりお気に入りの場所へ走った。

桜の花の甘いかおりがする。

彼女はいた。

お気に入りの場所に咲く桜の木の下に。

小さな体を折り畳んで、スケッチブックに絵を描いている。

僕に気付いて首を傾げ、可愛らしく笑う彼女。

チリリンｯ

鈴の音が『おはよう』と言っているみたいで僕はほほえんだ。

｢おはよう｣

｢おはよっ！｣

鈴祢の笑顔に心が締め付けられる。

あぁ、恋心ってこういう物なのかな？

会ったばかりな君なのに抱き締めたくて仕方ない。

君が僕の物になればいいのに…

そしたらきっと僕の世界にも幸せであふれるのに…