―五年後―

僕は大学生。

左手には愛する人のゴム。

僕は美大に進んだ。

愛する人の夢を叶たくて。

今僕は公園の桜の木の下でスケッチブックに絵を描いている。

目の前に一人の少女が掛けてきた。

クリッとした目に少し日に焼けた髪の毛。

その姿に彼女を思い出した。

僕は微笑んでスケッチブックを閉じ、帰ろうとした。

「鈴音ー!帰りますよー?」

僕は思わずその声に振り向いた。

鈴祢?

「はーいママ!」

さっきの少女が掛けていく。

チリリン…

鈴の音が聞こえた気がした。

僕の鈴からではなくて、あの少女から。

少女は途中で立ち止まって、振り返って可愛らしい笑顔で僕に手を振った。

「バイバイお兄ちゃん」

「ばいばい…」

僕も手を振った。

少女また走っていってしまった。

あの子は鈴祢の生まれ変わりだろうか…?

次の日、僕が課題の提出で出した絵のタイトルは

『愛する人との再会』

桜の木の下にいる少年と少女。
それをはさんで向かい合うように描かれた男女の顔の絵。

それは僕と鈴祢の作品。

僕はその絵で校内一位をとった。




鈴祢へ
僕は絶対に愛する人を忘れません