チリリン
チリン

音が大きくなっていく。

僕の上半身は少し前に乗り出していた。

わたり廊下の端からひょこっと表れたのは可愛らしい女の子だった。

僕と同い年には見えないほどに幼い顔。

クリッとした目にほんのりピンクのかかった健康そうな頬。
ハーフアップに結ばれた髪は日に焼けて少し茶色っぽい。

彼女が僕に気付くと、肩まである髪を揺らして微笑んだ。

チリリン

彼女が鈴の音の犯人らしい。

「鈴祢ーッ!美術室そっちじゃないよー」

彼女がびくっとするとまた鈴がチリリンとなった。

「あれー、そうだったけ?よくわかんないやぁ」

彼女は笑う。

それにあわせて鈴も笑っているかのようになった。

彼女はいったいどこに鈴を着けているんだろう?

僕が彼女を見つめると、彼女は走っていってしまった。

太陽の光が彼女の後頭部で反射した。

僕は目をこらす。

彼女についている鈴の場所がわかった。

鈴は彼女の髪を束ねているゴムに付いていたのだ。

チリリン

軽く優しい音を残して彼女は消えた。

その時、僕の心に一滴だけ雫が落ちたんだ。