チリリンッ!

僕の手に懐かしい鈴の音がした。

これは鈴音のゴム…

なぜだ?鈴音はいつもこれを絶対に付けていたのに…

「留学先に行く日においていったの。あの子の親が唯一残していった鈴でできてるわ」

伯母さんは哀しげな笑みを浮かべてゴムを撫でた。

僕は鈴を見た。

キーホルダーについているような大きさの鈴だけ確かに少し古くて、ゴムはまだ新しい。

「あの子の親が事故にあった日。その鈴のついた鍵だけが残ったの。
それをあの子がお守りにって肌身離さず持ってたのよ。
なぜ置いていったのかはわからないけど…」

伯母さんは不思議そうにゴムを覗き込んだ。

僕はゴムを手首にはめた。

「大切にします。」

伯母さんは優しく微笑んで「そうしてあげて」と言った。

その時窓から風が吹き込んで、紙飛行機が僕の足元へ飛んできた。

僕は紙飛行機を拾う。

それは僕が鈴祢へ飛ばした紙飛行機だった。

僕はまた流れそうになった涙をぐっと唇を噛んで我慢した。

紙飛行機を机の上に戻して、僕はつぶやいた。

伯母さんは、首を傾げた。

でも僕が何をいったかは聞かなかった。

僕はゆっくり家へ帰る。

僕の腕がゆれるのと同時に鈴の音が優しく鳴った。