僕は森山 淳。
今年高校一年生になる。
僕の家は母さんと政也さん(義父さん)の三人家族だ。
父さんは僕が中学生の時に母さんと離婚した。
離婚した二ヵ月後に事故で死んじゃったけど。

政也さんは、僕が中学二年生の時にできた母さんの恋人だ。
そして今僕の新しい義父さん。

政也さんは優しいいい人だ。

今日も遅刻しそうな僕を車で送ってくれた。

僕は冷めた声でお礼を言うんだ。

僕の心は水のない砂漠。
乾ききっていて、魂までも抜けてしまった人形のよう。

僕はこの世界に呆れていたんだ。

ろくでもない人間に犯された地球も
父さんと死に別れたのに泣きもせず、新しい男を連れてくる母さんも
僕を無邪気なあの頃のままでいさせてくれない時間も
全部大嫌いだ。



昼休み。

僕は裏庭の木陰の下に一人寝転んでいる。

僕には友達がいないからいつも一人だ。

別に淋しくない。

友達なんてめんどくさいだけだ。

チリン…

「ん?鈴?」

チリリン…

その音は僕の目の前にあるわたり廊下の校舎側から聞こえた。

僕は起き上がってわたり廊下の端を見つめる。

誰が来るんだろう。

いつもならそんなことに興味を持たないのに僕の目は、わたり廊下の端に釘づけになっていた。