「あなたは鈴祢のお母さんですか?」

不思議に思った僕は聞いてみた。

「いいえ、伯母です。あの子は、五歳の時に置いていかれたの。それで私が引き取って育てていたの」

僕の頭のなかが真っ白になった。

鈴祢は捨てられた子?

「何で!?」

「借金がひどくて夜逃げをするのに、小さかったあの子を育てるのを無理だと考えたんでしょうね。」

おばさんは、寺の方を見て哀しげにつぶやいた。

僕の中には悲しみ以外に怒りが生まれた。

「親はっ!?借金を返したら鈴祢を迎えにこれたはずです!」

おばさんは目を閉じて、ゆっくりと首を横に振った。

「あの子の親は、あの子を置いていった日に交通事故で死んだの。」

僕の中の怒りは壊れた。

僕を支えていた足がガクッと崩れた。

「真夜中で、焦っていたから左右をちゃんと確認せずに道路に飛びだして…」

「なんでっ…!なんでそんな…!そんなあああぁッッッ!!!」

僕は泣きじゃくった。

地面におでこをつけて、何度も何度も地面をたたいた。

なんで鈴祢はそんなに苦しまなきゃいけないんだ?

鈴祢が何をした?

鈴祢はいつでもまわりを幸せにしてくれる素敵な人なのに…!

なぜ鈴祢ばかりそんな不幸なめにあわなきゃいけないんだ!