鈴祢が外国に行く日。

僕は学校の窓から外を見ていた。

今日の今頃、鈴祢は船の上。

船で行くと言うのは先生に聞いて後から知った。

美術の先生に聞いたら、すぐに教えてくれた。

コルディオン二号で行くそうだ。

空には黒い雲。

いやな予感がする。

誰かがケータイでテレビを見ていたのか、僕の耳には衝撃的な言葉が聞こえた。

『ニュース速報です。
日本海を航海していた
コルディオン二号が沈没した模様です
理由は天気が急にかわり、波に流され岩に激突したようです。
生存者は今だ不明です。』

コルディオン二号…

僕の耳に届いたその言葉は、僕の夢を壊した。

その船には僕の大切な人がいるんです。

消えられては困るんです。

僕は誰かのケータイに飛び付いた。

顔色一つ変えずに淡々と話すニュースキャスター。

『えー。ただ今入った情報によりますと
乗客は一人も見つからず、全員死亡と推定されたもようです』

全員?

違うだろ?

一人、忘れてる

優しい鈴の音を響かせる優しい女の子の名前

鈴祢…

白山鈴祢

その名を口にしてくれ

頼む彼女が生きているといってくれ

約束をしたんだ
彼女ともう一度会う約束を…