「彼女がね、いたんだあ…」

涙を抑えようとしても上手くいかず、声が情けなく震えてしまう。


「え…嘘」

「ほんと。 屋上に居たのはあの人じゃなくて彼女だった。私のこと散々馬鹿にした」

「そんな…」


涙を拭くために袖で顔を擦ってるから、さやちゃんの表情は見えないけど、多分、声からして泣いてる。

泣かないで、さやちゃん。…ってあれ、なんか立場逆じゃないか。


「みぃ〜…」

次の瞬間には、さやちゃんの腕の中。

呼吸をする度に肩が上下して、私もその度にがくがく、揺れた。

「さやちゃんまで、なんで泣くの」

「だっで、みーが、泣いてるから…」


うう。さやちゃん、大好き。

高校で出会ったばかりだからまだ2年の付き合いだけど、さやちゃん以上に大事な友達なんていない。


「ほら、もう泣かないで。
今度はさやちゃんの番なんだから」


そう。

私達にはそれぞれ好きな人がいて、一緒に告白しようと約束したんだ。

その約束の日が今日。

さやちゃんは、今日の夜に告白をする。


「…うん。失恋パーティー、よろしくね」

私からゆっくり離れて、さやちゃんは赤い目のまま柔らかく笑った。

うん。やっぱり、さやちゃんは笑顔でいた方が可愛い。泣き顔も可愛かったけどね。


「今日の夜、連絡待ってる」

「うん、みーに一番に知らせるから!」


そこで予鈴が丁度鳴って、どちらからともなく、手を繋ぎながらそれぞれの教室に戻った。