しばらくの間、地面とお友達状態のままで涙を放置した。

顔、ひどいことになってるんだろうなあ。教室戻りたくない。


このまま風にさらされるのも悪くないかも。ちょっと強すぎてスカートがひらひら揺れてるけど。

まあいいか。誰もいないし。どーでもいいし。

スカートも放置して目を閉じた瞬間、誰かが扉を開ける音がした。

げ。なんでこんな時に

「みー? いるー?」

「…さやちゃん?!」


さやちゃん。

さやちゃんの声!


上半身を起こして声の方を見ると、
セミロングで内巻きに巻かれた明る過ぎない茶髪に、私より少し高い身長。短めのスカートから伸びる白い美脚。
そして何より笑顔がとびっきり可愛い、さやちゃんこと花木莢美が立っていた。



[みー]とは私のあだ名。

大親友のさやちゃんだけがそう呼んでくれる。


「みー!いたあ!」

さやちゃんが駆け寄ってくると同時に、私も跳ねるように身体を起こしてさやちゃんに飛びついた。


「さやちゃん〜…ううっ」


そのままさやちゃんの肩に顔を埋める。安心してまた涙が溢れてきた。



「ね、どうだった?!ちゃんと云えた?」


「…ううん」

「え?」



さやちゃんは私を引きはがし、涙で歪んだ私の顔を覗きこんできた。
いやん、そんなに見ないでぇ。…なんちゃって。はは。


「なんで?何があったの?」

さやちゃんの可愛い顔から笑顔が消え、声のトーンが一気に落ちた。