「千秋さま」
まだ微かに笑いながら、あたしの名前を呼ぶ。
「…なによ」
「ありがとうございます」
は?と視線を狐燈に向けると、狐燈はすでに、まっすぐ前を見据えていた。
「…あんたって、
それしか言えないタチ?」
「千秋さまだけですよ」
そう言って、また笑う。
あたしはムー…と、口をへの字に曲げたあと。
「……ごめん…。
父親のこと…何も言わなくて…」
本当に言わなきゃいけないと思ったことを口に出した。
「私は構いませんが…。
千秋さまがどうしても
納得いかないというのなら……」
「……なら?」
「明日から毎日、油揚げ料理でいかがですか?」
「…う…、そ、それだけは勘弁して…」
さすがに毎日は、嫌だ…。