「あたしのことは千秋でいいよ」
「いえ、そういうわけには…」
だから、どういうわけよ…。
「いいから。 名前で呼んで」
「…しかし…」
「呼ばないと送り返すから」
そんなあたしの無理やりな言葉に、
一瞬考えた彼は。
「…では、せめて千秋さまと
お呼びさせていただきます」
ふ、と微笑んで、丁寧に答えた。
多少納得はいかないが…。
まぁ、いっか。
「これからよろしくね」
「こちらこそ、
末永く宜しくお願い致します」
お前は嫁か!
「あたしは、」
「…?」
「待ってるから、ずっと」
貴方の記憶が戻る、その時まで。
──ずっと。
あの時、貴方は。
『──ある月の夜、私は必ず
その力によって導かれます。
そして、貴方が花に誓う時、
私は再び月によって導かれるでしょう』
そう、言ってくれたよね。
だからあたしは何度だって誓うよ。
もう、離れない、って。
それが、あたしを知る貴方の最後の言葉だから。