―――その夜。
あたしは、猫鈴さんを出迎える準備を手伝っていた。
まさにそれは、お祭りのようで…。
「……鰹節…。
しかもそのまま…?」
「ああ、それはそこおいといて」
……これを見ると、本当に猫だ。
しかし、お酒が供えられているのを見ると。
やっぱり、妖怪というか、なんというか…。
神なんだと実感する。
杯(さかずき)の中のお酒に映る満月は、その中でゆらゆら、と揺れる。
そこで、今日は満月なんだ、とようやく気がついた。
「あら、ここに置いてた鮭は?」
「それならさっき砂狗がもっていきましたけど…」
「とんだ馬鹿な犬だな」
「鮭、好きなんだ…」
「あとで猫鈴に殺されるぞ」
なんて…。
この雰囲気が、あたしは好きなのかも。