「────あれ、もういいの?」
部屋を出て、廊下を歩いていると。
何かの書物を持った雅と出くわした。
「うん、ありがとう」
そうやって笑うと。
「そう」と小さく呟いて、雅も微笑んだ。
「そういえば、こっちにはよく来るの?」
雅は東条家の継承者であるため、ここより少し離れた本家に住んでいる。
ちなみに、こちらは分家である。
「そうね、ここにはたくさんの本があるし
なにより、本家より落ち着くのよ」
なんて言う雅は、雅らしい。
「それに」
と、続けて。
「ここには、おじいちゃんの思い出がたくさんあるから」
その言葉と表情に、雅は、変わったな、と思った。
みんなが、少しずつ確実に変わり始めている。