──19XX.6.X
狐燈がわが家に来て、数日がたった。
狐燈は、妖狐と云う妖だったようだ。
満月の夜に現れた、
九つに割かれた尻尾は
確実に、妖そのものだった。
私は問うた。
“お前は、自分が妖だということも
覚えてはいないのか”
と。
やつの答えは簡単であった。
“私は、自分が何なのか、
ましてや妖なのかも
まったく、わかりません”
やつは、何の感情も示さず
ただ、平然と言った。
やつは、孤独だった。
だからこそ、私は心から
狐燈という一人の存在を
守ろうと誓った───。
「──何かわかったか?」
暇そうに問いかけてきた來狐さんに。
「いえ、まだ何も…」
そう答えると。
「そうか」
ふわり、と一つ、欠伸をした。
あたしは、再びページをめくる。