「廊下ですれ違った時からずっと、気になってて、さ」
恥ずかしそうに、ガシガシと頭を掻いた彼は、再びあたしに視線を向ける。
「良かったらでいい。
…俺と、付き合ってください」
ペコリ、と礼儀正しく頭を下げた。
「…………」
「あ、返事はいつでもいいから。
俺は佐川。で、これ…アドレス」
そう言って、佐川くんはあたしに小さな紙を渡すと、どこかへ去っていってしまった。
……なんだったんだ、今の…。
渡された小さな紙を、ぽかんとしながら見ると。
そこには“佐川圭輔”と書いてあって、その下にアドレスが載っている。
未だ、放心状態のまま、あたしも廊下を進んでいった。