「───そして、貴方と出会ったのです」
…そんなことがあったなんて。
「じゃあ、どうしても契約しなかったのは、」
「もう二度と、誰一人傷つけたくはなかったからです」
あたしが紡ごうとした言葉を彼が、苦しそうに紡ぎあげる。
だから。
「……千秋、さま…」
どうしても見ていられなくて、あたしは無意識に、彼を抱きしめていた。
「大丈夫。あたしは消えない。
…ずっと、側にいるから」
そう言うと、しばらくしてフッ、と乾いた小さな笑いが耳を横切った。
「…ありがとう、ございます」
そして、彼はソッ、とあたしから離れると、静かに跪いた。