「もう二度と、こんな思いを
したくは、なかったのです…」
「狐燈……。
…あたしは、ね…」
「……?」
「……あたしはね。思うんだ。
狐燈のお母さんも、おじいちゃんも
誰も、狐燈を恨んでなんかないって」
……だって。
あの時、ちらっと見えた表情は本当に、愛おしそうだったから。
……と。
完璧に、弟くんの存在を忘れてた。
「………」
美しい九つの尻尾を靡かせてじっ、とあたし達を窺っている。
……あれ?
てっきり、なにか来るかと思ったのに
……拍子抜けだ。
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