そして、彼は続ける。
「貴方はずっと…
謂わば、現実逃避をしている」
「…來孤…っ!」
「…今、兄さんと話をしてるんじゃない。
千秋さんと話してるんだ」
遮る言葉に、弟くんはあたしから目を離すことなく、狐燈を黙らせる。
ある意味、兄よりも強敵かも。
「現実を受け入れているようで、貴方は全く受け入れていない」
鋭い視線と言葉が深く、あたしに突き刺さる。
「…そんなこと…」
ない。
とは、言い切れなかった。
確かに、もしかしたら…
あたしは、今も心のどこかで現実逃避しているのかもしれない。
でも。
「…例え、そうだとしても…
何の意味があるんですか?」
あたしだって、これくらいで負けるほど、ヤワじゃない。
……と、思っている。