「あ、授業は!?」


「……終わった。これ」




そう言って、あたしの前に何冊かのノートを差し出してくる。




やっぱり、木村くんは優しいな…と、実感。






「…ありがとう」





あたしはそれを受け取って、笑顔を向けた。








「『時は、刻々と彼の心を蝕んでいる。
貴方(きほう)よ。
そなたしか、彼は救えない。

彼(か)を、心を、救え…──』




……猫鈴の言伝(ことづて)」








保健室を今まさに出ようとしたあたしに、木村くんが窓の外を見ながら言った。






あたしは、再び「ありがとう」と言って、オレンジに染まった廊下を全力で駆け出した。